従業員を雇用した場合に関わる「社会保険」というのは、広義では「健康保険」、「厚生年金保険」、「労働者災害補償保険」(以下「労災保険」といいます)及び「雇用保険」のことです。これらのうちで、健康保険及び厚生年金保険をまとめて「狭義の社会保険」と呼び、労災保険及び雇用保険をまとめて「労働保険」と呼びます。
ご質問のケースにおいては、個人事業のままで狭義の社会保険に任意加入することを検討してもいいと思われます。
社会保険加入の義務について、以下に述べます。
1.狭義の社会保険
(1)法人
法人については、社会保険への加入が義務付けられていて、たとえ代表者1名の会社であっても加入しなければなりません。
(2)個人
個人事業の場合は、加入が義務付けられているケースと、任意加入とされているケースがあります。従業員が5人以上であれば一部の業種を除いて加入しなければならず、4人以下であれば任意加入となります。この「一部の業種」というのは、農林水産業、サービス業、法務業、宗教業であり、これらの業種については人数が何人であっても任意加入です。
例えば、サービス業を経営する個人は社会保険への加入が任意です。加入をするためには、従業員の半数以上の同意を得た後、年金事務所に対して「健康保険・厚生年金保険任意適用申請書」及び「健康保険・厚生年金保険任意適用同意書」を提出する必要があります。このことによって、その事務所で働く人全員(加入に反対した人が含まれ、事業主は除かれます)が、加入することとなります。
このように、任意加入とされている事務所が社会保険への加入をした後に脱退するためには、従業員の4分の3以上の同意を得なければなりません。加入より脱退の方が厳しい条件となっていますので、留意する必要があります。
ちなみに、任意加入のケースについては、従業員の半数以上が社会保険への加入を希望していても、必ず加入しなければならないわけではなく、決定や申請を行うのは事業主です。
2.労働保険
法人であっても個人であっても、従業員を1人でも雇用した場合には、労働保険に加入しなければなりません。
労災保険については、個人単位ではなく事務所単位で適用され、従業員が1人でもいるのであれば、加入する必要があります(個人で営む農林水産業の一部は除外されます)。
雇用保険については、一定の条件に該当する従業員(31日以上の雇用見込みがあって、1週間の所定労働時間が20時間以上であることが原則です)は、加入が義務付けられています。
労働保険の加入手続きについては、労働基準監督署に「保険関係成立届」を、ハローワークに「雇用保険適用事業所設置届」を提出するといったことを行う必要があります。