1.給与より控除すべきもの
毎月最低1回は、一定の期日に給与を支払わなければなりません。この給与より控除しなければならないものが存在します。
(1)税金
ア.所得税
個人の所得に対して課されます。「源泉徴収制度」、すなわち、個人の給与より会社が事前に控除して個人の代わりに納付する制度が採用されています。
イ.住民税
前年の所得に対して課されます。市区町村より通知された「特別徴収税額通知書」を基に、毎月差し引きます。
(2)社会保険
ア.健康保険
ケガや病気の場合における出費について、自己負担を軽減する制度です。企業グループや大企業の場合は組合管掌健康保険に加入し、中小企業等の場合は協会けんぽに加入します。個人の報酬月額及び保険料額表より、保険料を算出します。給与より天引きをした額に会社負担額を合算し、当月分の支払いを翌月末までに行います(厚生年金保険及び介護保険も同様です)。
イ.厚生年金保険
民間企業の従業員が加入する公的年金制度です。老齢、障害、死亡に対する保障が存在します。
ウ.雇用保険
従業員の生活及び雇用の安定を目的とする制度です。失業の際には失業手当(基本手当)の受給が可能です。個人の給与に被保険者負担率(一般の事業の場合、1000分の5です)を乗じて、保険料を算出します。
雇用保険及び労働者災害補償保険については、年度初めに保険料を概算して申告納付し、翌年度の初めに清算します。
エ.介護保険
40歳以上の人が加入する社会保険で、保険料の徴収を行います。
2.初月の給与より控除すべきもの
給与の支払日において実際に支払いをするのは、固定的な給与(基本給等)に変動的な給与(通勤手当、
残業手当等)を合算した総支給額より、控除額合計を控除した額となります。
健康保険や厚生年金保険(、介護保険)に関しては、前月分の保険料が控除されることになっていま
すので、入社した月の翌月の給与より控除されます。そして、雇用保険料の控除は、入社した月より
始まります。したがって、初月の給与より控除すべきものは所得税及び雇用保険料(従業員が雇用保険の被保険者に該当する場合)であり、住民税については、その従業員が前職を退職した時期等によって手続きが異なります。
控除を忘れたものについては、事情を従業員に話し、翌月の給与による調整等を行う必要があります。控除に関する誤りがあると、従業員との信頼関係が揺らいでしまうこともあります。また、所得税については、会社に徴収義務があるため、控除を忘れたら個人に代わって会社が払わなければならないということになります。
3.給与支払手続きの流れ
給与支給手続きは、毎月必要であることから、誤りがなく円滑に行うことができるように、日にちを決めて行うといいと思われます。
給与支給手続きの流れは、次の通りです。
出金簿を締めます(毎月決まった日を締日とし、1ヶ月間の従業員の勤怠をとりまとめます)。
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基本給に加えて、残業手当や通勤手当等を算出します。
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総支給額より、社会保険料の控除額や所得税の源泉徴収額を算出します。
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従業員に配付する給与明細書や、給与台帳を作成します。
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一定の給料日に、給与を支払います。従業員に給与明細書を配付します。