法人成りをすることによって、対外的信用を得やすかったり節約できたりするというメリットは、よく耳にします。メリットが多くあることは確かですが、設立や維持に費用や手間がかかるといったデメリットも存在します。
法人成りのメリット及びデメリットを簡潔に述べます。
1.法人成りのメリット
(1)対外的信用を得やすいこと
会社は登記されていて、決算書を公開しています。法務局に出向くと、会社の概要を誰でも容易に理解することができるため、個人事業の場合より社会的な信用を得やすいといえます。
(2)役員報酬を支払って節税できること
個人事業の場合とは税率の構造が異なることから、収入によっては税務上有利に設定することが可能です。「給与」として会社より受領することでサラリーマンと同様な経費の控除(給与所得控除)が可能となるほか、家族を従業員にして給与を支払うことも可能です。ただ、勤務実態が必要とされます。
(3)青色欠損金を9年間控除できること
青色申告を行っている場合、赤字が発生したら9年間(平成20年4月1日前に終了した事業年度に関しては7年間)、その赤字の翌期への繰越しが認められています。一方、個人事業の場合は3年間とされています。
(4)必要な資金を集めやすいこと
個人事業には出資という概念が存在しないことから、第三者より資金を集めるためには借金か税金の課される贈与ということになり、現状として銀行融資も容易ではありません。一方、会社の場合は、第三者より出資を募ることや融資を受けることが可能であり、個人事業の場合と比較して資金を集めやすいといえるでしょう。
(5)事業が継続されること
法人の場合、解散するまで事業は継続されます。一方、個人事業の場合は、事業は事業主に依存しています。
(6)債務責任が有限であること
たとえ会社が倒産したとしても、借金の返済を行うのは個人ではなく会社です。株主が債権者に対して責任を負っているのは、自らが出資した金額の範囲内です。一方、個人事業の場合は、事業に失敗したら、負債は全て個人の責任となります。
2.法人成りのデメリット
(1)法人住民税の均等割が課されること
利益の有無にかかわらず、法人住民税の均等割が課されます。その金額については、資本金額や従業員数によって違うものの、年当たり7万円以上は納付しなければなりません。
(2)交際費に上限があること
個人事業の場合は接待交際費に上限は設けられていませんが、法人の場合は経費とすることができる上限が決められています。
(3)事業で儲けたお金を個人で自由に使えないこと
会社のお金を個人で自由に使うことは認められていません。役員報酬の変更は、年に一回、事業年度開始日より3ヶ月以内のみ可能ですので、儲けに応じた取り分の変更は不可能です。
(4)決算手続きが煩雑であること
複式簿記で記帳することや、貸借対照表、損益決算書といった決算書を作成することが必要となります。
(5)維持に費用や手間がかかること
会社の移転や役員の変更、増資、増減等があるたびに、変更の登記をしなければならず、登録免許税が課されます。