企業間における取引では、通常は現金をその都度動かすわけではなく、信用に基づき掛売りを行います。売上金の帳簿上の未収金のことを「売掛金」といい、当然ながら売掛金は回収しないうちは自由に使用できる資金にはなりません。売掛金を回収できないうちに買掛金の支払いがかさんだ場合には、黒字倒産に陥ってしまいます。売掛金が増加することはキャッシュフローの悪化につながるということに、留意が必要です。
売掛金を確実に回収し、会社のお金を回していくには、平素の売掛金の管理が大切です。時間が経過するに従って、売掛金の回収率は低下する傾向があります。それゆえ、得意先からの支払いが遅れた早い段階で行動することが重要であるといえます。
得意先ごとの「売掛金管理台帳(得意先元帳)」を作成することによって、売掛金の状況を把握するといいでしょう。売掛金の発生及び回収を正確に管理することが重要です。誤った金額について請求書を発行したり督促したりすることは、得意先に迷惑がかかるだけでなく、信用を失うことにつながります。そして、回収が遅れていることが判明した場合には、早期に対応すれば回収率の向上が期待できます。
支払いが遅れている得意先には、早期に電話をかけて確認すること等を行います。督促後も支払いがなされなければ、法的手段を取る前に、話し合いの場を設けることを検討するといいと思われます。支払えない理由を聞き、支払える方法について確認を行います。
話し合いが不可能であったり、話し合いを行って約束したものの支払いがなかったりする場合については、内容証明郵便を送付するという方法が存在します。「内容証明郵便」というのは、いつ、誰から誰に、いかなる内容の文書が発送されたかが、郵便局によって証明されるサービスのことです。このサービスを利用することで、「請求書が届いていない」というような水掛け論を防止できるほか、売掛金の請求に関する時効が延長されます。支払期限より2年が経ち、相手先がこの時効を適用しようとすると、法律上は売掛金が消滅してしまいます。ただし、内容証明郵便を送れば、時効が半年間延長されるのです。
このような努力の後に、相手先の経営状況等によって回収が不可能であると考えたならば、「貸倒損失」として計上します。回収が不可能である売掛金を放置しておくと、帳簿上は利益が発生していることから、税金がその分かかってしまいます。なお、貸倒損失の計上については、「完全に回収が不能であることが客観的に確定」されないと認められませんので、留意が必要です。