A.小規模宅地等の特例というのは、特定居住用宅地等に該当する宅地等につき240�uまで(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330�uまで)80%の評価減を、特定事業用宅地等か特定同族会社事業用宅地等に該当する宅地等につき400�uまで80%の評価減を、貸付事業用宅地等に該当する宅地等につき200�uまで50%の評価減を受けることができる制度のことです。
1.特定居住用宅地等
被相続人やその同一生計の親族の居住用に使われていた宅地等で、基本的には、その宅地等を取得した被相続人の親族が相続開始時より相続税の申告期限まで、その宅地等を所有し、かつ、その家屋に住んでいる場合、特定居住用宅地等として240�uまで(平成27年1月1日以降に相続か遺贈によって取得する財産に係る相続税については330�uまで)、土地の評価が80%下がることになります。
ただし、被相続人やその同一生計の親族の居住用に使われていた宅地等を、被相続人の配偶者が取得したときには、上記の条件にかかわらず、無条件で特定居住用宅地等に該当します。
なお、上記の「同一生計の親族」については、仮に、高橋さん(被相続人)は町田と新宿に土地を有していて、町田には高橋さんが、新宿には息子さん夫婦が住んでいるとします。この場合に、例えば、息子さんが高橋さんに仕送りを送っていたり、息子さん夫婦が高橋さんの日々の生活の面倒を見るために町田に通っていたりしているようなときは、同一生計の親族であると思われます。
そして、息子さんが新宿の土地を取得し、相続後も新宿に住んでいれば、特定居住用宅地等に該当します。ただし、息子さんが同一生計の親族に該当し、高橋さんより土地を無償で借りて住んでいる必要があります。
また、被相続人の居住用に使われていた宅地等をその被相続人と住んでいない親族が取得したときには、次の条件に当てはまれば特定居住用宅地等に該当します。
・相続開始前3年以内にその人かその人の配偶者の有する家屋(相続開始直前に被相続人が住んでいた家屋は除外されます)に住んだことがないこと
・被相続人に配偶者がいないこと
・被相続人に、相続開始の直前において同居の親族でその被相続人の相続人である人がいないこと
・申告期限までその宅地等を有していること
一般的には二次相続の場合に、1人で住んでいた配偶者の自宅を相続する人が、上記の条件に当てはまることがあります。
ちなみに、居住用の土地を共有で相続した場合は、相続人ごとに条件の判定を行い、条件に当てはまらない相続人の持分については、評価減は適用されません。また、一棟の建物に居住用とそれ以外の部分が存在する場合は、居住用部分に対応する土地につき、評価減は適用されます(それ以外の部分に対応する土地については、各利用区分に応じた評価減の適用を受けることが可能です)。
2.特定事業用宅地等
被相続人やその同一生計の親族の事業用に使われていた宅地等で、基本的には、その宅地等を取得した被相続人の親族が、その宅地等を相続税の申告期限まで有していて、相続税の申告期限までに事業を引き継ぎ、かつ営んでいる場合、特定事業用宅地等として400�uまで、土地の評価が80%下がることになります。
仮に、新宿で魚屋を経営していたお父さんが死去したとします。この場合に、息子さんが新宿の魚屋を引き継いで経営すると、新宿の土地は特定事業用宅地等に該当します。
続いて、仮に、加藤さん(被相続人)は町田と新宿に土地を有していて、町田では加藤さんは八百屋を営み、新宿では息子夫婦が魚屋を営んでいるとします。この場合に、息子さんが新宿の土地を取得し、相続後も魚屋を営んでいれば、新宿の土地は特定事業用宅地等に該当します。ただし、息子さんが同一生計の親族に該当し、加藤さんより新宿の土地を無償で借りている必要があります。
なお、この場合に、息子さんが加藤さんの八百屋を引き継いだら、町田の土地も特定事業用宅地等に該当することとなり、新宿と町田のうち好きな方で最大400�u、80%の減額が可能です。新宿の方が町田より土地の価値が高いといえますので、相続税を考慮すれば、土地が高評価である新宿の魚屋を続けていくのが得でしょう。
ちなみに、事業用の土地を共有で相続した場合は、相続人ごとに条件の判定を行い、条件に当てはまらない相続人の持分については、評価減は適用されません。
3.特定同族会社事業用宅地等
被相続人のオーナー会社(特定同族会社)の事業用に使われていた宅地等で、基本的には、被相続人がオーナー会社にその宅地等を有料で貸していて、その宅地等を取得した被相続人の親族がその宅地等を相続税の申告期限まで有し、オーナー会社が相続後も引き続き事業を行っている場合、特定同族会社事業用宅地等として400�uまで、土地の評価が80%下がることになります。
上記の「特定同族会社」というのは、相続開始時点において50%を超える議決権を死去した人とその一族(内縁の妻等も含まれます)が占めている会社のことです。
仮に、佐藤さん(被相続人)は、(株)佐藤商店のオーナー社長であって、新宿に土地を有し、(株)佐藤商店は新宿で飲食店を営んでいるとします。この場合に、息子さんが相続税の申告期限までに(株)佐藤商店の役員となって、(株)佐藤商店が相続後も引き続き新宿で飲食店を営んでいれば、特定同族会社事業用宅地等に該当します。
なお、役員となる親族は、同居親族や同一生計の親族である必要はなく、親族であれば構いません。しかし、(株)佐藤商店が営む事業が不動産賃貸業等である場合は、貸付事業用宅地等に該当し、200�uまで、土地の評価が50%下がることになります。
4.貸付事業用宅地等
被相続人やその同一生計の親族の貸付事業(不動産貸付業、駐車場業等)用に使われていた宅地等で、基本的には、その宅地等を取得した被相続人の親族が、その宅地等を相続税の申告期限まで有していて、相続税の申告期限までに貸付事業を引き継ぎ、かつ営んでいる場合、貸付事業用宅地等として200�uまで、土地の評価が50%下がることになります。
仮に、田中さん(被相続人)は、土地と建物を有していて他人に賃貸し、大家さん(不動産貸付業)をして、毎月適正額の賃貸料を受領し、不動産所得として毎年確定申告しているとします。この場合に、この土地と建物を相続した息子さんが、相続税の申告期限まで保有し、同日までに事業を引き継ぎ、同日までその事業を行っていれば、貸付事業用宅地等に該当します。
なお、賃貸用物件のほかに、自宅等の小規模宅地等の特例の適用を受ける土地を有する場合、一定の調整計算によって適用面積の算出を行います。
5.その他
日本郵便株式会社に貸し付けられている一定の郵便局舎の敷地の用に供されている宅地等は、特定事業用宅地等に該当するものとして400�uまで、土地の評価が80%下がることになります。